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迷惑メールのラブストーリー

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2005年 11月 18日

エリという女

日時:2005年10月29日 13:31
件名:お待たせしました。
*********************
永らくお待たせいたしました。
ご期待にお答えして只今の時間より地域女性を直メールよりご紹介
致します。メール内容はすべて希望女性が書いたものであり、当サ
イトの宣伝内容など一切ございません。
・◆・◇・◆・◇・◆・◇・◆・◇・◆・◇・◆・◇・◆・◇・
 はじめまして。私は、社会人三年目で普通のOLしてます。今、
同棲してる恋人がいますが、何か最近、彼と一緒にいても楽しくな
くなって少しづつ不満が増えてきてしまいました。
 友達や遊びの方が楽しくて、つい彼の待つ部屋に帰りたくない日
が多くなりなんだか険悪ムードです。
 このまま、彼一人と付き合って結婚しちやうのかなぁ?とか考え
たら何か嫌になっちゃったんです(T-T)。不安は多少あるけど、や
っぱり新しい出会いを探そうって決心しました。だから、今回は無
料逆紹介をお願いしたのです。よかったら、私をイイ女に仕立て上
げて下さいね。ちゃんとお礼もいたします(*^ ^*)。お返事を待っ
てます。「エリ」と登録してます。
・◆・◇・◆・◇・◆・◇・◆・◇・◆・◇・◆・◇・◆・◇・
返信専用(登録無料): http://www.????



エリという女_a0042086_19404062.jpg私はこのところ、お腹の具合がよくない。
30秒に一度、トイレに駆け込むことがよくある。
しかし、トイレから出たあとも、どうにもお腹の調子が割り切れないのだ。
駆け込む。
すっきり出して、トイレを出る。
そしてまた駆け込む。
もう一生、こんなことをして終わるのではないか。そんな不安に襲われる。

だが、不安に駆られるのは自分のお腹のことだけではない。
彼とのことだ。

彼は、すし屋のネタケースの営業マンだ。
新品のケースを卸しに来たとき、たまたまバイトをしていた私と出会った。
私が社会人となってから同棲を始めて、現在に至る。

メールでは、OLをしていたと言ったけど、先日リストラされた。
だからこうして家の中で、調子の悪いお腹とも悠々と格闘できる。
今では彼の収入が頼りだ。

私はなんで数ある女性から選ばれたんだろう?
ネタケースには私よりたくさん綺麗な人がいるのに。

と書いてるうちに彼が帰ってきた。
彼に食べさせてもらってるし、
ネタケースの魚みたく、
おとなしくしていよう。

う~ん、それにしてもお腹が・・・。

「お帰り!早かったね!」
いつもは満面の笑みが、今日はちょっとゆがんだ。


# by meiwaku-love | 2005-11-18 19:43
2005年 11月 10日

亜由美という女

日時:2005年8月5日 19:54
件名:お願いです!人助けでエッチしてください!

******************
初めまして。亜由美です。20歳で、今は芸能人見習いやってます。
いきなりのメールすみません。
プロフみて、性交できる男の人だと思ってメールしました。
お願いがあるんですが、あたしを妊娠させてください!
困ってます!!
実は、今年11月にグラビアアイドルとしてデビューする予定なんですが、
それに向けて、くびれを作るためにアバラを一段取り外す
手術をしなきゃならないんです!!
はっきり言って、嫌です!そんなことしてまで芸能人になんて
なりたくない(><)!妊娠すれば、事務所をクビになります。
アバラを取り外すぐらいなら、クビになりたい。
親から受け継いだ体をそんな風にいじられたくないです。
お願いします!!あたしを妊娠させてください!!
連絡のほうなんですが、このヤフーメールはもう見れなくなるし、
妊娠してからはいっさい迷惑かけたくないので、
http://www.XXXX.com/
ここの掲示板に亜由美って名前で秘密受信箱を作っておきました。
そこに連絡お願いします!!
あたし、もうどうしたらいいのか分からなくて。
どうか、妊娠させてください!(><)!!


*********************

恐るべしショッカーが彼女をとらえ、手術を施している!
その手術とはもちろん、彼女のアバラ骨を外してしまうというものだ。
「やめてー!!私のアバラを外さないで!!」

亜由美はいつも、そこで起きる。
脂汗が額を流れる。

「おはよう。どうしたの?そんな怖い顔しちゃって」
階段を下りてきた亜由美に母が言った。

「ううん、なんでもない。お母さん、私を生んで幸せ?」
「何言ってるの。当たり前じゃない。ヘンなこと言う子ねぇ」
亜由美は母の後ろ姿を見ながら、アバラ骨を外されたくないために妊娠したいなんて
言えないと改めて思った。

「・・・アッ」
そのとき亜由美の目に飛び込んできたのはスペアリブだった。
昨晩のおかずの残りを、母親が温めて直していたのだ。
「何、大声出して。早くテーブルについて」
最近、「骨」に敏感な亜由美なのだ。

すでにテーブルについていたのは父親だった。
彼が読んでいる新聞を覗き込むと、そこにはバラバラ殺人の記事。
「おう、おはよう。物騒だな、骨まで切り刻んで・・・」
「・・・骨って大事だよね」
「ん、うん?うんまあ・・・」


母親がスペアリブを持ってきた。
「さっきから、どういう風の吹き回しだい?そう言えば木更津のおばあさんが、
『亜由美ちゃんいつ雑誌とかテレビとか出るの?』って聞いてきたよ。

グラビアアイドルデビュー。
周囲は期待をもってたびたび口にしていたことが、今、亜由美にとっては重荷のなにものでもなかった。

グラビアでの水着写真。
まだ見ぬ人との妊娠。
どちらが親にとって幸せなのか。
とにかく早くその人と出逢って、好きになりたい。
目に涙を浮かべながらスペアリブをほおばる亜由美だった。


# by meiwaku-love | 2005-11-10 10:47
2005年 10月 28日

麻央という女

日時:2005年9月14日 16:20
件名:【手渡し金お預かりのご案内】麻央様より15万円!

お客様に逆指名のお知らせです。
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ご指名されたお客様
[お名前]麻央さん
[ご年齢]23歳
[血液型]A型
[ご趣味]ドライブ、カラオケ、映画
[援助額]月8万円
[希望日]週末
---------------------------------------------------
 麻央様より最初のデート代プラス報酬として15万円を先にお預かりしております。
当方では男性の負担をまったくゼロにする為に、最初にデート代と報酬金をはじめにお預かりしております。
至急、麻央様へご連絡下さい。※直通メールとなっておりますので、すぐにご連絡可能です。
---------------------------------------------------
 当サイトでは、男性女性両方のお客様に満足していただく為、お客様が2日以内にお相手に連絡をいただけない場合、
お預かりしていた分を返却する為、お客様の権利は破棄される事になりますので、ご注意ください。
運営サブチーフ 水元




麻央はお寺の娘だ。
まだ見ぬ彼と出会ったら、そのことは後で言おうと思っている。
早く婿を早く婿をと、もうろくした祖父が今日も寝床でうなっている。

15万円は麻央にとってはとりたてて高い金額ではない。
いつでも渡せるよう、今日ものし袋に入れて持っている。

お経も得意である。写経もできる。
しかし、出会いの場では「お寺の娘である」といつも言い出せずにいた。

山の手線ゲームでも、「ジャンル何か無い?」と聞かれたときに、「宗派!!」と言いたい衝動に駆られた。
絶対負けない自信があった。

麻央の理想の彼氏は、まず何よりも「ハゲ」であることだった。
彼の髪の毛が長くなってしまったときには「短髪がいいよ」「短髪が似合うよ」と洗脳することで、お坊さんアレルギーを
少しでも軽くしようと思っていた。

「好きな映画は何か」と聞かれたときには必ず「少林寺」を勧めた。

「ドライブで行きたい場所はどこ?」と尋ねられて、「神社仏閣」と答えて、
自分は飽きるほど実家を見ているのに、目を輝かせて「お寺っていいよね」と
彼に言うのだった。

「カラオケで好きな曲は?」と質問されたら「一休さん」と答えた。麻央という女_a0042086_12322698.jpg

だが、今までの彼女の言動の、本当の目的を告げると、去っていった。
そもそも片田舎のお寺に引っ込んで僧侶になってくれる男性などいなかったのだ。

煩悩でいっぱいの麻央は、今日も結婚相手が見つかるよう、
お百度参りをする。


# by meiwaku-love | 2005-10-28 12:31
2005年 10月 20日

鈴木あずさという女

送信者:info@eidjgu.com
日時:2005年9月14日 17:23
件名:メール転送〔0912〕

宛先:鈴木 あずさ
件名:(untitled)
本文:
 「あずさは割り切った付き合いのできる男性を探しています。今
まで焦ってもいい結果になったことがないですが・・・私は、離婚
歴あり。今は一人で暮らしています。十分に幸せですけど、それと
は別に新しい出会いを見つけたいと言う気持ちも本心です。掲示板
を見る限り、過激な書き込みも多いみたいだし、場所もなかなか合
わなくて、サイトに地域紹介されたこのアドレスに送ってみました。
不愉快だったら申し訳ありません。理解できる人だけでいいので、
メールを超えて逢ってみたいです!男として、女として、それぞれ
を満たす付き合いをしていきましょう♪(^o^)ノ ・・・逆×の相場
はあまり詳しくないですが、10万くらいならやってみたいです。お
返事の中に住所を教えていただけますか?宜しくお願いします。」
-----------------------------------------------------------
※以上の部分は鈴木 さん(ID:134401)からのメールを直接転送(無
料)されたものです。

私は今回の紹介を担当している佐藤 美咲と申しますが、宜しくお
願いします。紹介された貴方様は無料登録後全ての女性と直接連絡
可能となっておりますので、先ず※会員ID※の取得(無料)をお願い
します。




あずさは焦っていた。
明日は家賃の振り込み日なのだ。
一ヶ月前、夫に突然逃げられ、今は汲々とした生活を送っている。
家賃13万円は、今のパッチワークの仕事ではとても工面できるお金ではない。
だから何とか金づるが欲しかった。いや物心両面で満たしてくれる相手が欲しかったのだ。

今日もイライラしてしまった。
行きつけのカフェでホットココアの上についているクリームが「ぬるい」というので激高し、変えてもらった。多少「ぬるい」のは仕方がない。

しかも、流れてくるタバコの煙。
あの人が吸っていた銘柄だった。
あずさは前の旦那が吸っていたタバコのにおいをイヤというほど吸っていた。
「ここの気流はどうなってるのよ!?禁煙席なのに煙いのはどういうこと!?」

文章では「幸せ」なんて強がってみたけれど、幸せじゃないのは分かってる。
鈴木あずさという名前。本名の鈴木に「あずさ」は似合わない。早く違う苗字になりたかった。そういう意味では前の旦那の「趙」(ちょう)は気に入っていた。そう、夫は中国人
だったのだ。
趙さんは祖国の中国福建省へ伝説のウーロン茶葉を取りに行きたいと置き手紙をして、
あずさのもとから去っていってしまったのだ。
だから、せめて日本人。しかも「理解できる」人。これが条件だった。そして、
家賃を少しでもいいから払ってくれる人。まあこれが当面の重要課題なのだが。

なんせ下の管理人のおばさんがうるさいのだ。今日も居留守を使う。
しかしおばさんの嗅覚は鋭かった。
「ウーロン茶葉の匂いがするわ。居留守使ってるのは分かってるんでしょ!?」
そう、夫の趙からのウーロン茶葉だった。離婚した今も、茶葉を送ってくれるのだ。
これが伝説の茶葉かどうかなんて知ったこっちゃない。ありがたいやら迷惑やら分からないが、部屋の片隅で、悔し涙でたれた鼻水を、茶葉で噛むあずさだった。


# by meiwaku-love | 2005-10-20 09:45